2008年02月26日

デス・コレクターズ

毎度、毎度の海外ミステリー小説です。

その殺人事件は30年前に起きたものと状況が酷似している。しかし、30年前世間を震撼させた凶悪殺人犯は、死刑を宣告された直後の法廷で射殺されて、もうこの世にはいない。30年という時を超えてつながっていたものはなにか?・・・・・

どっかで聞いたことがあるような滑り出し、こういう設定自体はそんなに独創的なものじゃない。それをどう処理するか、ってことだよなー、と思って読んでいると、「なんだ、そういうことなの?」と、ちょっと拍子ぬけになる。それもずいぶん前段で分かっちゃうわけ。ところがね、それが作者の巧妙な仕掛けなんだな、これが。
そこから次々と隠されていたものが明るみに出されるにつれて、謎は複雑に絡み合ってくる。断片が1ヵ所合ったかと思えば、さらに矛盾が現れ、ゴチャゴチャになって「もう読むのやーめた!」という気分になるころ、衝撃の真実がドーンとつきつけられるのだ。
私もちょっと油断していたところに、いきなりガンと一発食らったもんで、けっこうのけぞりましたよ。
登場人物がけっこう多い上に、なんとなく憶えにくい名前ばかりなので、なかなか頭に入らないのが難点だが、エピローグ前35ページのサスペンスは圧巻、一気にやられちゃいます。

ケーブルテレビ:ミステリチャンネル「闘うベストテン2007(海外)」第1位

ジャック・カーリイ著 文春文庫 771円+税
posted by りょうじー at 22:09| 青森 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月22日

死者の島

読書感想文といいながらミステリばかりで恐縮です。(ここ十数年ミステリしか読んでない)
今回もリサイクル105円本ですが、これだけ面白ければ凄く得した気分になりますなー。

元敏腕新聞記者でミステリ作家のヘンリー・O(六十代の女性。ヘンリエッタ・オドワイヤー・コリンズが本名)に奇妙な依頼がくる。彼女の古い知り合いで情報産業界で成功を収めた大富豪チェイスから、自分を殺そうと企てる犯人をつきとめて欲しいというのだ。しかも彼が所有する外界から隔てられた孤島に怪しい者が全て集められていて、その中から探し出せ、という指示。はじめはあまり乗り気ではなかったヘンリー・Oだったが、巨大ハリケーンが近づきつつあるその島で、次第にその異常な状況にのめりこんでいく・・・・・

アガサ・クリスティの名作「そして誰もいなくなった」を彷彿とさせるシチュエーションですが、プロットは全然違います。
絶海の孤島という密室、限られた登場人物、その中で起こるべくして起こるいくつかの事件。フーダニット(誰が?)ホワイダニット(どうして?)!古典的な筆致ながら丁寧で綿密な語り口でつづられる数々の謎。
ジグソウパズルのピースが次々と嵌まっていって、全ての疑問がぴたりと収まるべき場所に収まった後で、さらにこの物語全体を覆っている「愛」の真実が明らかになるラストは素晴らしい!その感動的な驚愕は快く胸に響く・・・・・・女性ミステリ作家ならではの味わいです。

キャロル・G・ハート著 ミステリアス・プレス文庫(ハヤカワ) 740円+税(もともとは) 
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2008年01月16日

廃墟ホテル

分類からいえばホラー小説でしょう、これは。でも、サスペンスに満ちたジェットコースター・ミステリといって良い。各章の終わりで「ギョッ」とさせられ「エーッ?」となるから次を読み続けずにいられない。ひさしぶりの激読だったなー。

「しかし、バレンジャーが最も鮮やかに覚えているのは<それを聞いて引き返すべきだったのは>見捨てられた通りに規則正しく響いてくる、悲しげなガーン、ガーン、ガーンという音だった。ひびの入った鐘のように粗い音だった。その音の源、そして、これから自分の踏み入ろうとする絶望をその音が表していることを彼はじきに知ることになる。」(本文2ページ目より)

秘かにブームになっているという《都市廃墟探検》。なにも手をつけず、なにも持ち出さず、痕跡を残さずに廃棄された建物を探検して、スリルを味わうという不法侵入趣味の輩が実際にいるらしい。
バレンジャーはその<クリーパー(都市探検家)>のグループに加わり、封印された忌まわしい過去を持つと噂される、打ち捨てられて久しいパラゴン・ホテルに侵入する。それは建物内部を探索するだけで満足し人知れず立ち去るはずの計画だった。しかしえたいの知れないなにか不穏で不気味なものが色濃く漂う巨大な廃墟ホテルは、次第に強さを増す嵐の夜、まさに迷宮となって彼らにのしかかってくる。

陰惨で血なまぐさい小説ですが、読者の怖いもの見たさを煽るのがとても上手い。そのドアを開ければ絶対恐ろしいなにかが潜んでいるはず、と思いつつ震えながらドアノブをひかざるを得ない。適宜肩透かしを交えながらもどんどんテンションがあがっていく・・・・・いやー、すっかりのせられてしまいました。

デイヴィッド・マレル著 ランダムハウス講談社 820円プラス税
リサイクル本で半額でGET。ラッキー!)
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2007年12月27日

タイタニック号の殺人

今年最後の読書感想文。
この前に2冊ばかり読んでるんだけど、ちょっとハズレだったな。感想を書く気にあまりならなかった。話題に上らない本でも個人的に好きなものにたまにアタるときもあるんですがね。反対に書評で絶対おもしろい!みたいなことが書かれていても、好みに合わなければ個人的には結局アウト。ま、読んでみなくちゃ分からないってことです。

その先に歴史上最も有名な海難事故が待っていることを知らずに、豪華客船の優雅な旅を享受する一等船室のセレブたち。その海上の巨大な密室状態のなかで殺人事件が起こる。一等船客のなかに乗り合わせていたのは「思考機械の事件簿」という探偵小説で一躍その名を知られた小説家ジャック・フットレル。限られた状況のなかで犯人探しをはじめることになるのだが・・・・・・

期待したほど派手な演出もない。アッと驚くドンデン返しも用意されてはいないから、謎解き興味という意味ではもの足りないが、探偵役のフットレルはじめ周囲の当時世界的な富豪たちはみんな実在の人物で、史実に基づいた綿密な調査・研究を経て書かれているので、豪華客船内の饗宴や一流の船上生活などがなかなかおもしろく読ませる。ミステリーというよりもそんなベル・エポックの時代(実際にはそんなには良い時代とはいえないようだが)の雰囲気を楽しむ本なのかも知れない。
なんといっても刻々と悲劇にちかづいているにもかかわらず、その運命をつゆも知らずに優雅な社交にいそしむ乗客たちと、それを懸命にもてなす乗組員たち、そんな特殊な人間模様のなかで起こる事件、そのシチュエーションそのもの、着眼点のすばらしさに心惹かれました。
posted by りょうじー at 23:59| 青森 ??| Comment(1) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月01日

クリスマス・プレゼント

ニューヨークのクリスマス・イヴ、車椅子の名探偵、NY市警特別捜査顧問のリンカーン・ライムは、知り合いの刑事から失踪人捜索の相談を受ける。行方不明と思われるのはある少女の母親。几帳面な性格のその母親が、電話も伝言もなしに家をあけることはありえないというのだ。脊髄損傷のため動くことのできないライムの手足となって捜査するアメリア・サックス刑事の活躍で、ボーイフレンドとともにいた母親が見つかる。家の玄関先で足を滑らせ転んだ拍子にひざに怪我を負ったことで気が動転し、娘に連絡するのをつい忘れてしまった、というのだが・・・・・・一件落着と見えたその瞬間は、後ろに隠されていた驚愕の事実がその恐ろしい顔を上げるはじまりだった。

上のあらすじは短編集「クリスマス・プレゼント」の表題作。「ボーン・コレクター」「コフィン・ダンサー」などの名作で読者を魅了した車椅子探偵リンカーン・ライムが、長編に劣らぬ魅力をふりまくこの作品をはじめ、サプライズミステリーの達人ジェフリー・ディーヴァーの面目躍如の16作品からなる小品集です。
疑り深いベテランのミステリー愛好読者をもコロッと騙してしまう筆力はすごい!長い小説でも一気に読ませてしまうそのパワーで書かれた短編ですからこりゃもうたまりません。どの一編も「ええーっ・・・・」とのけぞること請け合いです。
個人的にはストラディバリを盗まれた偉ぶったバイオリニストを皮肉る「ノクターン」が好み。手に汗握る展開もないし凶悪殺人犯も登場しない、他の作品と比べればアッと驚くところもないけれど、スマートであったかい感じが好きです。

ジェフリー・ディーヴァー著「クリスマス・プレゼント」 文春文庫 本体905円+税
posted by りょうじー at 14:21| 青森 ????| Comment(2) | TrackBack(1) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月11日

図書館の死体

都会での一流サラリーマンの職を捨て、認知症の母親の介護のために故郷の田舎町ミラボーに帰っきたジョーディ・ポティートは、今は町の図書館で館長をしている。
ある日、普段から図書館のほとんどの本を有害図書と決めつけ排除を迫る狂信家のベータ・ハーチャーと、町民環視のなかで大喧嘩してしまい、ジョーディは「あの女、あの世に送ってやりたい」と口ばしってしまう。そして翌朝、いつものように図書館に出勤したジョーディが見たものは、なんと頭を殴られて血を流しているベータの死体。ジョーディは重要な容疑者として保安官、検事補ににらまれるはめに・・・・・・


ちょっとコミカルでシニカルな文体は、始めはいわゆるブラックユーモア系なのかと思わせられるが、読み進むにつれて一級の本格推理ものであることが分かる。後半はサスペンスの味も加わって一気に読ませます。殺人事件があったにもかかわらずどこかのどかな滑り出しから、予想外の事実が徐々に姿を見せ始め、ついに仰天の真相が暴かれていく・・・・いやー、みごとな展開です。
アメリカの古い静かな田舎町で起こる殺人事件、容疑をかけられるのは背が高くハンサムな若い図書館長、彼に恋する女性、みんな人は良いけれど、それぞれなにか訳ありの隣人たち、古き良きハリウッド映画のにおいがして好みのミステリーでしたねー。
ほのかに温かいラストも素敵。後味もなかなかけっこうでした!

ジェフ・アボット著 ハヤカワ文庫(ミステリアス・プレス)680円+税 (だけど今回もリサイクル本105円で購入)
posted by りょうじー at 14:39| 青森 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月21日

ハンニバル・ライジング(小説)

4月26日の完全個人的映画評「ハンニバルライジング」の同名原作小説
今回は「観てから読んだ」ことになりますが、原作者のトマス・ハリス自身が脚色もてがけたということもあり、ごく細かな違いはあるものの、まず過不足なく映画化されていたと思います。映画のシーンを回想しながら読みすすんだ感じでした。
映画のほうは復讐劇の分量が多いのに対して、小説のほうはそこにいたるプロセスが丹念に書かれているのが大きな違い。映像としておもしろく観せるためにはそうならざるを得なかったのでしょうな。
映画を観たときにも実は思ったことなのですが、ハンニバル・レクターという特異で強烈なキャラクターが創りあげられるなにか決定的なものが「我、如何にして怪物となりしか」というコピーの割には、希薄だった。その歯がゆさは原作を読んでも結局払拭できませんでした。ただ単に「狂っている」とか「気が違っている」というようなことばでは到底表しきれないハンニバル・レクターの「狂気」の源流のようなものは分かったけど、「ええっ、そ、そんなことが・・・・・」とのけぞるようなものがあるのじゃないか、と思うのはこっちの期待過多なんですかねぇ。
「ハンニバル・ライジング」のエピローグから、このモンスターが初めて登場する「レッド・ドラゴン」(映画では三作目)に到るまでに相当の年月があり、その間いくつかの凶悪事件を犯していることはもう分かっているので、今度はその辺が小説になり映画になっていくのかな?次はぜひ複雑な伏線が絡み合う「羊たちの沈黙」クラスの本格ミステリーにしてもらいたいものです。
それにしても、今作で突如日本が登場したにはびっくり!「サムライ精神」だけならさほど驚かないが、水墨画や俳句・和歌までがひんぱんに出てくる。ハンニバル・レクターは日本語もしゃべれるらしいよ。
posted by りょうじー at 15:50| 青森 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月07日

軌道離脱

キップ・ドーソンは平凡なサラリーマンだが、宇宙旅行会社ASUのキャンペーンに当選、宇宙船イントレピッド号で念願の地球の軌道を回る旅へ出ることになる。同乗予定の乗客のキャンセルによって、ベテランの飛行士とドーソンの二人だけでイントレピッドは軌道に乗るが、小さな流星体が船を貫通。飛行士は即死、ドーソンはパニックになりながらも必死に帰還の方法を探るが船内の酸素がなくなるのは時間の問題、地上との通信も途絶えてしまう。死を覚悟したドーソンは遺書がわりにパソコンに心境と回想録を打ち込みはじめる。もしかしたら宇宙の塵となって永久に読まれることがないかもしれない回想録を・・・・・・

近い将来、宇宙旅行ビジネスとする企業が現れるかも知れない。現にロシアでそのプロジェクトはあるようですからなぁ。そうなると万全の措置をとっているとはいえ、想定外の原因による事故はつきものでしょう。この小説は生還の可能性が限りなくゼロに近い状況を綿密に描いてなかなか面白かった。映画化も決定されているようです。
ズブの素人である主人公が困難と混乱をのりこえて地球に帰りつくことができるのか。この宇宙船を救助するために地上ではどんな方策をとれるのか。そのあたりがこの本のポイントだと思うんだけど、たくさんの登場人物の人間模様も同時に描こうとしているためにちょっと散漫になったところがあると思う。事の緊急性に的を絞ってそこをグイグイ押すだけ押したほうが良かったと思うけど・・・・・

ジョン・J・ナンス著 ハヤカワ文庫 920円+税
posted by りょうじー at 14:42| 青森 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月08日

デセプション・ポイント

秋に大統領選を控えたアメリカ、現職のザック・ハーニー大統領の対立候補セクストン上院議員は、NASAの財政を圧迫する過度な予算や度重なる宇宙事業の失敗を追求することで優勢に立っていたが、娘のレイチェルは父の強引な選挙戦略や姑息な手段に批判的だった。しかもレイチェルは国家偵察局(NRO)の情報分析のスペシャリスト、ハーニー大統領のブレインのひとりでもあることが、父子間の溝をいっそう深くしていた。
大統領から緊急に呼び出され、詳細を告げられぬままレイチェルは北極圏へ向かう。厳寒の大氷河の一端に設けられたNASAの秘密基地でレイチェルが見たもの、それはハーニー大統領の劣勢を一気に覆すにちがいない衝撃的な光景だった・・・・・・


あの「ダヴィンチ・コード」のダン・ブラウンです。ジェット・コースターノヴェルですなー。知的な昂奮を起こさせるという意味では「ダヴィンチ・コード」には遠く及ばないし、職人的な読者騙し技が返ってサプライズを薄めている感があるものの、ひとつの謎が明らかになる直前に章が変わって場面転換するので読みつづけざるをえない。途中でしおりをはさむのに一大決心が必要という点では凄い!
私は巻末の解説は本編の前には絶対読まないことにしておりますが、それはとんでもないネタばれがあることがままあるからで、この解説もひどい。読み終わるまで解説はなにがあっても開かないようにしましょう。(裏表紙のあらすじも読んじゃダメ!)

ダン・ブラウン著 角川文庫(上・下)各700円
posted by りょうじー at 14:13| 青森 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月18日

七人のおば

幸せな結婚生活をロンドンで送るサリーは、ニューヨークの友人からの手紙でおばがおじを毒殺したあと自殺をしたことを知る。だがその手紙には肝心の名前が書いていなかった。サリーにはおばが七人いるというのに・・・・・。
どのおばがどのおじを殺したのか、気がかりでならないサリーは夫のピーターに、眠れないままに七人のおばと過ごした若き日の回想を話しはじめる。思い出をたどるうちにもしかしたら事実が浮かび上がってくるかも知れない。姉妹でありながら性格も生きかたもちがう七人のおばたち。諍いが絶えなかったあの頃。話しが進むにつれて、どのおばが事件を起こしてもおかしくないと思われてくる・・・・・・


浅学にして知らなかったのですが、これはミステリー史上名作のひとつに上げられているものらしいのです(読後解説に書いてあった)。いや、確かに面白かった。一筋縄ではいかない、一癖もふた癖もあるおばたち。最初は登場人物の多さにとまどうが、彼女たちの確執から引き起こされる数々のできごとが丁寧に描かれるうちに自然にキャラクターが頭に入る仕組みになっているのです。だけどキャラクターはハッキリしてくるにつれて話はしだいに入り組んできて、読者は煙にまかれるというわけ。そして最後に導かれる明解な結末。ロマンチックな香りが小説全体に流れる中で謎解きのカタルシスを十分に味わえる、なるほど名作ですなー。

パット・マガー著「七人のおば」 創元推理文庫 600円(だけどリサイクル105円本でGET)
posted by りょうじー at 23:41| 青森 ????| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月16日

奇術師

世界幻想文学大賞受賞作、ミステリチャンネル「闘うベストテン2004」第1位、「このミステリーがすごい2005年版」第10位

新聞記者アンドルー・ウェストリーが父から送られた封筒を開けると、そこには見知らぬ女性から彼の消息を聞かれたことが書かれた手紙と、その女性から送られてきた一冊の本が入っていた。その本は「奇術の秘法」。奇術にはなんの興味も持たないアンドルーには意味のないものに思われたが、著者名には心当たりがある。幼い頃にウェストリー家の養子となった彼の実の姓だったのだ。さらにアンドルーは説明しがたい感覚を常に持っていた。自分には一卵性双生児の片割れがどこかにいて精神的なコンタクトを取り合っているという不思議な感覚。彼の出生の記録のどこを調べてもふたごの兄弟がいたはずがないにもかかわらず。
取材先での本の送り主の女性との出会いによってアンドルーとその祖先の驚愕の事実が徐々に浮かびあがってくる・・・・・・・


この小説、かねがね読んでみたいと思っていたが、近くの書店には置いていなかったので半ば諦めていました。注文してまで、という気にもなれなかったし。それが先日某書店に行ってなにげなく棚を見たら見つけてしまったのですねー。手拍子で即購入して読みました。
ミステリーでもあり、SFでもあり、幻想小説でもあるこの本の、奇妙と不思議に魅せられました。謎は百年以上前にさかのぼって、ライバル同志の二人の奇術師の名声の奪い合いと諍いに至る。二人の奇術師がそれぞれの側から記した回想録と日記を中心に、想像もできない奇々怪々なストーリー展開の後に待っているのは信じられない結末。最後20ページはあまりに怪しく恐ろしいけれど、切々とした哀しみが心に沁みわたる読後感です。
誰しもアッと驚き、必ず一度は読み返さずにはいられない。作者の巧妙な語り口にまんまとはまってしまう快感は最上級です。

クリストファー・プリースト著 奇術師 ハヤカワ文庫 (940円+税) 
posted by りょうじー at 13:07| 青森 ????| Comment(4) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月03日

珈琲相場師

17世紀のヨーロッパ、アムステルダムは商業の中心都市。ポルトガル出身のユダヤ人相場師ミゲルは砂糖の取引で大損、弟ダニエルの家に居候の身であった。次の取引に成功しなければ破滅が待っている。そこへ裕福な未亡人ヘールトロイドから今までみたことのない飲みものを紹介される。無理やり口にしたとたんミゲルはその魔力的な飲みものに夢中になる。この飲みものはすぐにヨーロッパ中に広がるにちがいない。いまのうちに手を打てば大金を手にすることができる。どん底から這い上がるチャンスがめぐってきたのだ。この新しい飲みもの「コーヒー」によって・・・・・

長篇なうえに物語の展開もちょっとグズグズなところがあって、読み終えるのに時間がかかってしまった。でも、視点がとてもおもしろい。圧倒的に読ませるものじゃないし、読後感もそんなにスッキリしないけど、今もなんだか妙に心にひっかかっている感じがとても良いのです。登場人物もみんな一癖ふた癖あるやつばかり。腹のさぐり合い、だまし合いが茶飯事として横行する中、彼自身とても善人とはいえない主人公ミゲルがそれをくぐり抜け、仕掛けられた罠を見破って成功と真実をつかみとることが果たしてできるのか。コーヒーがヨーロッパに広まる直前という実に興味深い時代背景とともに楽しく読みました。

デイヴィッド・リス著/ハヤカワ文庫/1000円(+税)
posted by りょうじー at 21:06| 青森 ????| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年01月28日

不変の神の事件

ルーファス・キングのミステリー。本格探偵小説だがどことなく奇妙な味もする。思いもよらない事のなりゆきに登場人物といっしょに読者も右往左往してしまう感じが好みです。

ニューヨーク市警の電話に男から通報が入る。「さっきから言ってるようにですね、警部補さん、ロングアイランドから車で帰ってくる途中、五十九丁目の橋のウェルフェア・アイランド・エレヴェータのところの信号に引っかかったんですが、となりに止まった車に男が二人、あいだに死体をはさむようにして乗ってたんです」・・・・しかも犯人と思われる男たちを含む家族がホテルの最上階のレストランで食事をしている、というのだ。そのレストランの常連でもある裕福な一家はとても殺人を犯すような人たちにはみえないのだが、どうも様子がおかしい。いったい何があったのか・・・・・

小説のはじめ、起こった事件は単純そうに見える。しかし読み進むに従って新たな事実がひとつひとつ明らかになっていくと、謎の霧は逆にじょじょに濃くなってゆき混乱の度合いも深まります。そしてついにヴェルクール警部補の論理的な推理によって導き出された真相は意外で驚くべきものでした。
最後の最後まで手のうちが読めない展開が快感、ああ、面白かった!

これもリサイクル105円本。創元推理文庫
posted by りょうじー at 21:31| 青森 ????| Comment(1) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月16日

星を継ぐもの

これはSFです。舞台は近未来の地球と月と木星だからSF小説としかいいようがありません。が、実はこれは壮大なスケールの本格謎解き小説なのでしたねぇ。このデビュー作で一気に人気SF作家となったJ.P.ホーガンの傑作「星を継ぐもの」。名前は知っていたのですがあんまりSFの方は得意としないのでなんとなく手にとらなかったのです。某リサイクル本屋の105円本の中にあったので軽い気持ちで購入、読み始めたのですが・・・・・面白いんだな、これが。

月面調査隊が真紅の宇宙服を着た死体を発見した。綿密な調査の結果驚愕の事実が判明する。死体はどの月面基地に所属でもなく世界のいかなる人間でもなかった。ほとんど現代人と同じ生物のそれはなんと五万年前に死んでいたのだ。未知の惑星からきたものか、それとも五万年も前に地球上に宇宙飛行の科学力をもつ文明があったというのか。謎は謎を呼び、矛盾が錯綜する・・・・・?l?b?g

読み進むにつれて複雑に絡み合った糸は徐々にほぐれていくが、根幹の謎は濃くなるばかり。しかし誰も考え付かないびっくりの結末が用意されているのでありました。そこに行き着くまでの紆余曲折と明解な論理性が快感です。解説を読んだら続編もあるということなので再び105円本コーナーをさがしてみなくちゃ。

※創元SF文庫 1996年6月 44版 
posted by りょうじー at 21:38| 青森 ????| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書感想文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする