もしこの映画を、ドラマとしてしか観ることができないひとには、そんなに面白くなかったかも知れない。なにもかもつじつまが合わないとサッパリしない、という方にもあまりお薦めできません。
時代に取り残されたような守加護の街のたたずまいは、どう観ても映画のセット。
登場人物のファッションや走っている車も20世紀初頭の雰囲気。
それなのに、みんな携帯電話で連絡を取り合っている・・・・・
リアリティーを求める映画じゃありません。「物語は絵空事でも、いかにもリアルに見せなきゃ」という主流からは完全に一線を画している。でも、そこには監督・三谷幸喜の強いこだわりと信念があった、と思う。そうでなければウソくささばかりが目立つ、どうしようもないおチャラケ映画になったところだ。監督の強固な信念を完全に理解して本気で演じている上手い役者たちと、巧みなデレクションと洒落たセンスにあふれた三谷の脚本と演出で、上質のコメディーになっていたと思います。映画そのものに対する限りないレスペクトと愛情に満ちた、大掛かりで贅沢で、それでいてハイセンスな素敵な芝居でした。
先ごろ急逝された名監督・市川昆、昭和の喜劇映画の二枚目役者として欠かせなかった名優・柳澤槇一が出演していたのも嬉しかった。ふつうの映画では到底考えられないカメオ出演者(チョイ出の顔見せ出演者)の数も凄かった。みんなみんな、「映画はいいよねー」という三谷のメッセージ。私はそのメッセージに大きくうなずかざるを得ない。この映画そのものは名作とはいえないかも知れないけど、洋画・邦画を問わず、私たちを楽しませ夢中にさせてきた数々の名画へのとても素直な賛辞と愛情に、少し涙した私でした。
マジックアワー・・・・・太陽が沈みきって、ほんとうの夜になる直前の夢のような一瞬・・・・・
「その日のマジックアワーを見逃したらどうしたら良いと思う?・・・・・次の日を待てばいいのさ」
ああ、なんて素敵なんだ。
★★★★★ 三谷幸喜、恐るべし! 大好きな映画です。

