駆け出しの頃、ベテランの楽員たちとうまくコミュニケーションをとるためには、相手のことを思う、慮(おもんばか)ることが大事だと気がついた、というようなことをこどもたちに教えていました。そういえば、テレビでコバケンさんの指揮を拝見していると、本番中指揮しながら演奏者に「ありがとうございます」とつぶやいておられることがよくありますねー。
1982年のJAMCA(日本男声合唱協会)の演奏会は東京。合同合唱は、その頃すでに世界的だった小林研一郎を指揮者に迎え、日フィルの管・打楽器奏者とともに名曲、三木稔「レクイエム」を演奏しました。いま考えても贅沢なステージですが、私は弘前メンネルコールの一員として歌いました。いうまでもなくとても素晴らしい指揮で、たくさん勉強になりましたが、前日の合同練習のときのこと、変拍子のちょっと取り方が難しい場所があって、打楽器奏者から「今の場所、指揮がよく分からない」みたいな指摘がありました。コバケンさんは「ごめんなさい。そこは僕うまくできないんです」ととても素直におっしゃったのが強く印象に残っています。
相手を気遣いながら、しかし、ゆるぎない指導力を併せ持つことの、指揮者としての最も大切な資質を気づかされた瞬間でした。

